表紙 > 住職より > 平成29年2月
正月の慌ただしさが少し落ち着く節気が小寒に入る頃、本門寺で随身修行をされている学生の皆様が、池上の町を唱題行脚しながら寺院を巡る『寒行』をされます。すっかり日の落ちた寒い中を、玄題旗を先頭に衣と手甲脚絆を身にまとった凛々しい姿で太鼓を叩きお題目を唱えます。照栄院にも毎年来て下さり、本堂前で読経唱題をして頂いています。新年早々にひたむきな僧侶の姿を見せて頂き、毎回背筋の伸ばされる思いをしております。本当に良いものです、見るのは。
今でこそ本門寺の学僧さんに対しては、畏敬の念は持ちながらも怖さは感じなくなりました。案外かわいい顔をされています。ですが、私の幼少時の印象は恐怖そのものでした。
大きい行事があるような時、お山の学生さんがお手伝いに来て下さいます。
・体が大きい
・決して笑わない
・目つきが悪い
・武士のような言葉を使う
・かすれた大声で読経をする
・お寺のお坊っちゃん(私の事です)に対して冷たい
こんな人を好きになるのは無理です。怖い存在でした。そんなお兄さんたちが体から湯気を放ちながら声を張り上げ太鼓を叩き、しかも集団で襲って来るのです。行脚の格好を見るのも嫌でした。外から聞こえる太鼓の音が、早く遠ざかって欲しいと願っていました。
そのような体験から若いお坊さんを怖く思うようになり、その人たちがやっている行脚が苦手になってしまったのです。誠に不幸な出来事と言えましょう。
そんな私が行脚嫌いを克服した出来事は、また次回に。いや、嫌いではなくなりましたが、好きではない。行脚嫌いでも好きでもない、行脚普通です、今は。
若者の懸命な姿は、本当に良いものです。 池上の学生さんの行脚姿、皆様にも是非一度は見て頂きたいものです。
石川龍彦