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樹老人
照栄院は朗慶山と号し日蓮宗に属す池上三院家の一つです。昔は「向林庵」あるいは「南谷檀林立善講寺」とも呼ばれていました。
口承によると、南谷檀林が盛んな頃、伊豆から一人の若い僧が檀林にやって来ました。ある時、本門寺の大法要の盛儀に接し彼は大変に感激しました。将来自分もこのような法要の中心に座りたいと思いました。
学期が終わった後、彼は一人妙見堂に籠もり、一週間の断食の行に入りました。学問を修めていつかは貫首となりたいと一心に祈りました。行を終えて、朦朧としながら妙見堂の参道に立つと、大樹のもとに一人の老人がいました。
老人がいいました。「仏道の修行は猊座に上って高価な法衣を着るためではない、地に降りて人々のかたくなな心の衣(ころも)をはがすためだ。」僧がはっとするともう老人はいませんでした。
数年して、学成った彼は故郷に帰りました。後年、再び妙見堂を訪れた時、あの大樹は大風で倒れていました。彼はその木で老人の姿を彫らせ妙見堂に納めました。
それが樹老人です。残念なことに、いつの間にかその像は失われました。
今ある像は、後年の再刻です。池上七福神の一つとなっています。
樹老人祠
樹老人祠