表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > まごまご(平成25年9月)
夏休みに二泊三日の旅行をしました。疲れました。暑さのせいでも、日程のせいでもありません。
孫が三人一緒だったからです。
大人五人に、孫は5歳4歳2歳。切符は5枚でいいはずですが、新幹線の6人掛けを独占しようと、子供切符も一枚買いました。大人の考えでは、2歳は膝の上、子供二人はひとつの席に座らせるはずでした。あてがはずれました。
その1枚を5歳に持たせたのが間違いでした。車内に入ると、5歳は当然のように、座席の真ん中に坐りました。4歳はそれを見て、なんでぼくはママと一緒なんだと泣きます。娘は子連れの旅に慣れています。
魔法の袋から、爪に貼るシールを出しました。2歳の人差し指に貼り始めると、5歳も4歳も興味深そうに見つめます。時間をかけて貼り終わると、4歳の指に工作を始めます。静かになって、何周かして、3人の指にマニキュアが何本か完成する頃には、浜松に着きました。
ババは孫に読んで聞かそうと絵本をかばんに入れていました。マニキュアのお休みの時に読みました。
孫達は興味深そうに聞いていました。ごくごく小さな声でしたが、新幹線は静かすぎます。音読の声は、異質で、近所に迷惑をかけているようなので、一回きりでした。
2歳は、車中、大人の膝の間を行ったり来たりして、ほとんど立ちっぱなしでした。駅に降りると急に駆けだしました。この子は狭い所が嫌いで、広い所に出ると元気になることを思い出しました。追いかけて手を取ろうとすると振り払われました。しかしエスカレーターの上に来ると、ひざに抱きついてきました。抱っこの合図です。2歳児を抱えてエスカレーターを降りる老人は緊張します。下に着くとすぐに腰を振りました。降ろせの合図です。改札までは手をつないでいましたが、改札を出ると手を振りほどいて、勝手に動き回り始めました。親はどんどん先を歩いていきます。
駅前で昼食、観光協会のバスに乗って、舘山寺温泉に着きました。浜名湖の遊覧船、ゲーム、入浴のあと、食べ放題の夕食でした。大きなテーブルに家族ごとに分かれて坐りましたが、4歳が気に入りません。5歳と一緒がいいと騒ぎます。子供用と大人用に分かれたお盆を並べ直して、やっと落ち着きました。食べ物は親がとってやっていましたが、飲み物は自分で取れる事に気が付きました。何度もお代りに行き、とうとうコップを持ったまま椅子に上がろうとして、親のお盆に中身をこぼしてしまいました。夕食後は湖畔で打ち上げ花火を鑑賞しました。
あくる日は、名古屋に単身赴任している4歳の父親も加わりプールです。4歳と5歳は張りあっています。あまり水泳は得意ではないのに、浮き輪も持たずに流れるプールで潜ったり泳いだり、親はさぞ疲れたことでしょう。ラーメンで昼飯のあとは昼寝、そして、プールは中止にして、ケーブルカーで湖を横断に行きました。ジジババはお役御免で、近所を散歩しました。
三日目は小雨、遊園地で遊ぶことにしました。良きライバルは互いを高めると言います。昨日のケーブルカーもそうですが、4歳と5歳は、高い所に行く乗り物が嫌いなはずです。しかし、弱みは見せられません。最後はウォーターシュートに挑戦しました。付き添った二人のパパの顔が引きつっていました。残った大人は写真を取ろうと待ち構えましたが、2歳がうろうろしています。娘は彼女を抱きあげてどこかに行ってくれました。でも、落下が早すぎて、写真は撮れませんでした。
帰りの新幹線でも同じことが繰り返されました。まず5歳が進行方向に向かう窓際に坐ってしまいました。4歳は不満でした。大きな声を出したので、ママがデッキに連れて行きました。しばらくすると、5歳もママとデッキに行きました。どういう話だったかは知りません、4人は帰ってきました。4歳は希望の席に座れました。やがて、車内販売が来ました。アイスクリームを買いました。4歳は、一口食べると、ママを見て、「楽しかったね」。
石川恒彦