表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 入院中(令和5年10月)
胃のGISTの手術で入院中です。10万人に一人の病気だそうです。胃や腸の粘膜の下にできる腫瘍です。ちなみに、子育ての頃買った50年前の家庭医学全書にはこの項目はありません。先生の話では、長くて一週間で退院できるとのことでしたが、もう3週間も経つのに、病院にいます。
手術は、口から内視鏡を入れ、胃の中を監視しながら、お腹に5か所ほど小さな穴をあけ内視鏡や手術道具を挿入し、モニターで様子を見ながら胃の外から腫瘍を切り取るのだそうです。切り取った腫瘍は、お臍のあたりにあけた切り口から、取り出します。お腹は炭酸ガスで膨らませ、器具の操作を楽にします。
麻酔が効いて、手術中は何もわかりませんでした。目が覚めると、ICUに寝かされていました。あくる日には元の部屋に戻りました。ところがオナラが出ません。その次の日も出ません。やっと三日目にかすかに出て、重湯が食べられました。しかし食欲がありません。一週間たって、おかしいというので、X線TVというので胃の動きを見ると、胃から腸へ食物が流れるのが緩慢だとわかりました。薬を処方されて一週間様子を見ることになりました。
一週間たって、またX線TVで見ると前より悪くなっています。そのまま絶食を続けて、夕方内視鏡を胃に入れようとすると、戻しました。食べたものが胃に溜まったままだったのです。また絶食です。あくる日、再度挿入すると、胃から腸に行く入り口が詰まっていました。幸い内視鏡で触ると開いたということです。また経過観察です。とうとう3週間目に入ってしまいました。
病院は、昔の人間には随分違って見えます。まず服装です。看護師は、あの独特の帽子をかぶって、白い制服、下はスカートでしたが、今は色はいろいろ、スカートとスラックスは選べるようです。お医者さんも、ネクタイに白衣という人はまれで、Tシャツで病室に来る医者もいます。
次に驚いたのは、コンピューター化です。看護師は、端末を乗せたカートを押して、病室にやってきます。血圧や熱を測るとその場で打ち込みます。オナラが出かどうかも入力します。患者の腕バンドについている番号と薬や点滴ついている番号をセンサーで照合してから、薬を飲ませたり点滴をつなぎます。こういう情報は医師と共有されています。逆に、看護師も医師の情報を与えられているようです。看護師はみんな小さな端末を持っていて、担当の患者が呼ぶとすぐ対応できるようになっています。看護師の詰め所を覗くと、みんなコンピューターに向かっています。注射の下手な看護師はいますが、キーボードの扱いが下手な看護師はいないようです
男の看護師が増えているのも新鮮です。アメリカ映画を見ると、あちらの男性看護師は、キン肉マンですが、ここではどちらかというと優男が多いようです。おばばにもてそうです。
看護以外の作業には、一目で外国人とわかる人たちが働いています。どこの国の人かわかりませんが、やや年かさで、愛想のいい人が多いように見えます。退院がいつになるかわかりませんが、食事を除いて,居心地はわるくありません。
石川恒彦