表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 辛口党(平成21年10月)
今度の選挙は、民主党と自民党が甘い選挙公約を掲げて、激しく争い、民主党が圧勝しました。しかし、この結果は、選挙公約の優劣によって決まったというより、長い自民党政権に国民が拒否反応を示したことによってもたらされたというのが常識的見方です。
私たちは、公約がそのまま実行されるとは期待していなかったのではないでしょうか。政権をとり、現実を見れば、実行不能な政策が出てくる事はやむをえません。その事をどう国民に説明するかが、内閣の力量です。
ところが、政権が交代して、一月がたちます。鳩山政権が律義に選挙公約を実行しようとしているのを見るとかえって不安が増します。早晩行き詰ってしまうのではないでしょうか。子ども手当、高速道路無料化、農家戸別所得補償、皆お金がかかります。それなのに、中小企業法人税率を11%に引き下げようとしています。行政の無駄を省くことによって、予算をひねり出すと言っていますが、大方の見るところ、無理なようです。増税か、国債の増発が必至です。
民主党は、増税や国債増発について、国民を説得できるでしょうか。国民を説得する前に、民主党内の意見をまとめられるでしょうか。政策に行き詰まり、党の分裂ということも十分考えられます。分裂した一方が自民党と連立政権を作るのでしょうか。それとも解散総選挙でしょうか。
総選挙となれば、また甘い公約を競うでしょう。しかし、いま日本に必要なのは、国民に厳しい現実を示し、困難に耐えねば将来がない事を説く、辛口の党です。
私は、社会保障のある市場経済が、日本の進むべき道だと思っています。それを前提に、わたくしの考える辛口党の政策を考えてみました。
1.増税 消費税を上げます。ただし、現在の内需不振を考えると、すぐには無理です。そこで、まず最初の一年は、税率を0%にします。それから年ごとに5%ずつ上げていきます。外国の福祉国家を見ると25%ぐらいまでが適当でしょう。来年は消費税が上がるとわかっていれば、消費の前倒しが期待できます。景気の回復を早めるでしょう。消費税は年金と保険に当てますが、その一部は国債で積み立てていきます。年々その割合を増やして、50年後には全額積み立てに回します。国の借金は国民の財産となり、年金は若者が年寄りを養う方式から、自分で積み立てたお金を受け取る方式に変わります。給付額は、所得税の生涯納付額に応じて変化するようにします。
2.中流国 外交は無理をしません。発言力を増そうとか存在感を示そうだとかはしません。無理に負担金を増やして、安保理の常任理事国になる必要はありません。平和で安全、そして誰もがその文化にあこがれる国が目標です。
3.補助から投資へ 補助金は市場経済にゆがみをもたらします。農業補助金を含めて、思い切った削減が必要です。補助金が無くなっても農業が無くなるとは考えられません。能率の悪い農場が淘汰されるだけです。日本航空も退場するでしょう。産業や企業を選んで投資することもやめます。教育や研究に投資します。各種の規制をなくして、起業環境を整えます。市場で投機する人ではなく、企業に投資する人を有利にします。新産業が興り、そこに衰退産業からの人材受け入れを期待します。
4.軍縮 当面、防衛予算を削減します。核兵器を開発し、その使用に躊躇を抱かないように見える国が近所に存在するとき、それは暴挙に見えます。しかし今は伝家の宝刀を質屋に入れて、お家再興をはかるときです。万が一を覚悟して、ピラニアのいる川を渡らなければならないのでしょう。時代はちょうど、有人兵器から無人兵器への過渡期です。重厚長大な戦車、戦闘機、戦艦から、軽快小型の遠隔操作兵器への研究開発に勤めて、日本の財政回復の時を待つべきです。そして、もしこの時期を無事に乗り越えることが出来れば、軽軍備の国を誰もが納得するでしょう。
石川恒彦