表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 動物将棋(平成30年6月)
動物将棋をご存知ですか。
先日、次男一家が遊びに来ました。外遊びに飽きて、家に入ると、次男と次男の長男が何か相談しています。紙とはさみとペンをくださいと言われ渡しました。
少しすると、孫が紙とカードを持ってきました。紙には、縦四つ、横三つのマス目が書かれていて、カードには、らいおん、ぞう、きりん、ひよこと書かれています。ひよこの裏は、にわとりです。それが二組あります。
次男が図を書いて説明してくれます。
らいおんは、縦横斜め、ひとますずつ進める。きりんは、縦横ひとます。ぞうは、斜めにひとます。ひよこは、前にひとます。ただし相手陣の奥に突き当たったら、にわとりになって、縦横斜め前に進める。
かわりばんこにカードを進める。相手のカードのあるますに自分のカードを進めれば、相手のカードを取れる。そのカードは自分の手番の時に、空いているますにおける。相手のらいおんを取るか、自分のらいおんが一番奥まで進めば、勝ち。いたって簡単です。
孫と対決することになりました。やってみると意外に難しいことが解りました。狭い盤面で、動きが制限されています。一つ間違えると大事にいたります。かなり真剣に考えました。
だいぶ進んだところで、孫が、「あ、おじいちゃんの勝ちだ」と叫びました。よく見ると、次の一手で勝つことがわかりました。やれやれ。もう一番やりました。今度は激戦でした。孫にやられてしまいました。
ネットで調べると、動物将棋は、女流棋士の北尾まどかさんが考え、同じく女流棋士の藤田麻衣子さんがデザインしたものだそうです。将棋を知らない人、特に子供に親しんでもらうために考案したといいます。たしかによくできていて、大人でも楽しめます。ただ、私の経験では、将棋の入門は、案外簡単で、将棋をやる仲間がいれば、すぐ覚えられます。すぐ覚えられるだけに、それからが大変で、ちょっと実力の上の人とやるとコテンパンです。将棋入門のための動物将棋より、将棋上達のための何かを考えてほしいと思いました。動物将棋は動物将棋として楽しめます。
囲碁は将棋と違って、とっつきが悪いようです。囲碁の規則はごく簡単ですが、勝負の概念が少し抽象的で、それをつかめないと楽しめません。碁盤は縦横19路ありますが、それでは大変と、9路や13路の盤があって、それは碁を覚えるために大変効果的で、それで入門する人が多いようです。
日本棋院では、実力の差があっても、男女は対等の立場です。それに対し、将棋連盟は差別的なようです。動物将棋を考えた、北尾さんも藤田さんも、それに不満を持っている人で、将棋連盟を飛び出して、活躍しています。動物将棋もその活動の一端です。私は将棋普及の道具としての動物将棋には疑問を持ちましたが、私の疑問が愚かで、将来動物将棋から将棋に進み、藤井7段を破る女流が出てくれば欣快の至りというものです。
石川恒彦