表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > まごまご忘れ物(平成29年9月)
老夫婦は娘と孫三人で蓮沼海岸に行きました。昨年から運転をやめましたので、総武本線を利用しました。
駅を降りると小雨が降っていました。まず、お昼を食べることにして、ラーメン屋に入りました。食べているうちに本降りになりました。食べ終わるころに雨がやんできましたので、それっと、タクシー乗り場に急ぎました。運転手がトランクを開けると、娘がちょっと待ってといって、ラーメン屋に戻りました。カバンを忘れていたのです。
宿に着いても小雨はやみません。それでも子供は元気です。海岸に行きました。波が高く、最初は怖がっていましたが、やがて海水でびしょびしょになりました。海岸で見ていた老夫婦は、すっかり寒くなりました。宿に帰って、男の孫と大浴場に行きました。小学生は手がかかりません。ゆっくり湯につかっていると、彼が脱衣所のほうに出ていきます。私はもう少し浸かっていたかったのですが、娘の顔を思い出して、湯船を出ました。ロビーで地ビールを買って、部屋に戻りました。少しして、そろそろ夕食だなと、腕を見ると、時計がありません。脱衣所に行ってみましたが、ありません。フロントで聞くと、届いていました。
あくる日は予報が外れて好天でした。いろんなプールのあるウォータガーデンに行きました。プールサイドに日よけテントを張って、一日楽しみました。日よけといっても、日が当たると、テントの中はかなり熱くなりました。帰りに、小銭を入れておいたビニール袋が無くなっているのに気づきました。ダメもとで、案内所に行くと、ありました。いい気持で、その晩は、見つかったお金の額だけ酒を飲みました。
あくる朝、妻がスマホがないと騒いでいます。娘が、あ!あれだといって、廊下の窓のところへ行きました。ありました。廊下で孫に会った妻が、窓枠にスマホを置いて、孫と遊んだようです
チェックアウトをしようと荷物をまとめていると、娘が探し物をしています。カメラがないというのです。念のため、フロントに行ってみると、今度も誰かが届けてくれていました。
この日は、荷物をフロントに預けて、海岸とプールの両方で遊びました。太陽がじりじりと照り、プールの来場者が多くなっていました。昨日の経験から、今日は、テントを木陰に張りました。孫たちは、もう慣れていて、昨日面白かったところや、入りそこなった施設に行きたがりますので、家内と娘はそれを追いかけて大変でした。私は、疲れてテントで横になっていました。こういう施設は、今では、酒が飲めないのが欠点です。
汽車の都合で、午後の早い時間に荷物をまとめて、ホテルに帰りました。フロントでシャワー室の鍵を借りると、フロントの人が、ビニール袋を出してきて、忘れものです、といいます。部屋に時計と充電器を忘れていました。
大人3人で、2回ずつ忘れ物をしました。合わせて6回、そのたびに、盗まれなかったのは奇跡のような気がします。特に、ビニール袋のお金には感激しました。
よく旅をしますが、忘れ物をした記憶がありません。孫に気を取られて、注意力が散漫になっていたのだと思います。あと何年、孫と遊べることやら。
石川恒彦