表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 花は難しい(平成29年12月)
今年は花に苦労しました。久遠林の入り口前に14個の植木鉢が並んでいます。そこに1年中花が絶えないように花を植え替えるのが私の仕事です。苗を買ってきて植え替えれば簡単ですが、それでは面白くありません。できるものは種から育てています。
春に、いつもより早くパンジーが駄目になったのが始まりでした。慌てて、挿し芽で育てていたユーフォルビアを持っていきましたが、どうもよく育たず、いくつかの鉢が枯れてしまいました。予備の鉢に取り換えたのですが、14個はそろいませんでした。
そこで、これも挿し芽で育てていた、マーガレットにしました。なぜか花が寂しく不満でした。梅雨がおわり、矮性のケイトウにしました、すこし密植過ぎたのか、枯れたり腐ったりする株が出てしまいました。彼岸すぎまで持つはずの予定が狂いました。ピンチヒッターにとってあるベコニアを並べました。
マーガレットは枝を切り詰め秋の出番を待ちました。肥料をやりすぎたのか、花がなかなか来ません。それでもベコニアが駄目になってきたので、久遠林に持っていきました。葉は立派ですが、花はパラパラと咲いています。
冬のためにパンジーの苗を育てています。今年の夏から秋にかけては暑かったので、彼岸すぎにタネを蒔きました。そのあと雨が続き、苗の成長がよくありません。先日鉢に定植しましたが、花が咲くのはいつ頃のことやら心配です。今年は久しぶりに苗を買わねばならないかも知れません。そのうえ、ケヤキの木の下に植え込んであるビョウヤナギの茂みも枯れ始めています。うまくいかない時はうまくいきません。
もともとは、ここに植木鉢を置く計画はありませんでした。ところが、久遠林が出来上がると、門の前の歩道と駐車場の段差に気がつかず、転ぶ人が出ました。そこで植木鉢を置いて、段差に気がつきやすくしたのです。はじめは一列に7つ並べたのですが、それでも踏み外す人がいるので、2列14鉢にしました。
手間がかかりますが、花を見て、感心してくれる人がいると励みになりました。「いつもお花がきれいですね。随分お金がかかるでしょう」「イヤ、1袋200円の種からですよ」と答えたり、「お宅のビョウヤナギは何年も元気ですね。(大田区立)池上会館にもありましたけれど、一年でダメになりましたよ」などといわれると、鼻がピクっとしました。
寒くなり、家内は樽を出してきて水を張りました。白菜漬けを作るためです。数日して、八百屋に行きました。しばらくすると、手ぶらで帰ってきました。どうしたのか聞くと、白菜が一つ800円もしたので、買うのをやめたといいます。今年は、天候不順で野菜全般に出来が悪く、なんでも高いといいます。
天候が悪くて野菜が育たなかったのだから、花がうまく育たなかったのもしょうがないなと、すこし納得しました。全面的に納得できないのには理由があります。告白しましょう。今年はあちこち旅行をしすぎて、大切な時に花の手入れができなかったのです。
専門の農家でも、天候には勝てない、難しい農作業を、素人が片手間にやってもうまくいかないということでしょう。ここ数年うまくいきすぎて油断したのです。
石川恒彦