表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 初夢 米軍を売る(平成29年1月)
不思議なことに、各国首脳は、日本語でした。はじめにトランプ大統領に会いました。
「あなたは、選挙期間中、アジアの同盟国が、アメリカ軍の力にただ乗りしていると批判して、アジアの国々が、軍事力を増強しないか、経費をもっと負担しなければ、米軍を引き上げると、おっしゃっていたようですが、今でもその考えに変わりはありませんか。」
「もちろん」
「それでは、アジアでのアメリカの存在感が薄れても構わないのでしょうか」
「そんなことはない。奴らは、偉大なアメリカとの貿易なしには生きていけない。たてついたら貿易を制限するだけだ」
「アメリカ軍がいなくなったら、アジアの国々は、軍備を増強するでしょう」
「それが、わしの希望だ」
「しかし、それに対抗して、ロシアも中国も軍備を増強するでしょう。緊張が高まります。不測の事態を予想できないでしょうか。日本の将官たちの中には、国が存亡の危機にあると判断した時、文民政府の命令を待たずに戦争を始めると、公言しているものが沢山います」
「それは、アジア人の問題だ」
「しかし、アメリカ軍の一方的な撤退は、中国が喜ぶだけです。それは、アメリカにとって都合のいいことではありません。一つ提案があります」
「なんだね。忙しいんだ。手短にいいたまえ」
「ロシアと中国に、条件が整えば、米軍をアジアから引き上げる準備があると伝えるのです。あなたは、交渉の達人といわれます。思い切った条件を提案したらどうでしょう。アメリカ軍の撤退を高く売るんです。台湾の独立、南北朝鮮の統一、オホーツク海から南シナ海にいたる小国有利の国境画定等々です。いくつかは実現するでしょう」
数日して、中国から呼び出された。どうやら、米国が中国に接触したらしい。中南海に行くと、シー・ジンピン主席が待っていた。
「朝鮮の統一は可能かね」
「ドイツの成功例を見ている韓国は、乗り気になるでしょう。朝鮮のほうは、まず指導部の安全保証です。幹部の完全特赦、キム・ジョンウンの統一国家終身主席就任、もちろん権限は持たせません、などが必要になるでしょう。」
「それでは、統一朝鮮の軍事力が脅威になるが」
「軍縮は条件になるでしょう。大国に保証された中立国の道もあります。核兵器とミサイルは、米中協力して撤去してはどうでしょう」
「半島の軍隊が無くなれば、日本の軍隊が心配だ」
「半島の軍縮と日本の軍縮を連動できます。もちろん、日本の領土安堵が条件ですが」
「安倍は納得するだろうか」
「中露が領土で譲歩すれば、日本人は外国の脅威を感じなくなるでしょう。米軍が日本から、特に沖縄から引き上げるとなれば、安倍は日本史に残る首相となります」
石川恒彦