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隠居からの手紙

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衰え

  孫と遊んでいると、体力の衰えに気が付きます。公園に連れて行って、前には一緒に遊びましたが、今では公園に着くとベンチに座り込んで、孫が遊んでいるのを見ているだけです。何か事故が起こりそうになれば、すぐ飛び出すつもりですが、「どっこいしょ」と言わなければ立ち上がれそうにありません。

  敏捷さや持続力では、もう孫にかないませんが、腕力と知力で何とか祖父の権威を保っています。まあ、すこし金力も手伝っています。

  それが先日、わが頭脳に衝撃が走りました。小学3年の孫とテレビの野球放送を見ていました。打者が打席に立つと、テレビの画面には、打者の名前が出ます。それを見て、私が読み終わるより早く、孫が「××××」と読みました。これは注意していなかったから負けたんだと、次の打者の時には、注意を集中して名前を読みました。が、やっぱり負けました。体力だけではない、知力も衰えていることを思い知らされました。

  老衰は細胞の劣化によっておこるといわれます。衛生状態の改善、医療の発達により、私たちの寿命は、飛躍的に伸びました。しかし、細胞の劣化を抑える方法は、見つかっていません。細胞の劣化は、生命体に組み込まれた、基本的なプログラムだという人もいます。とすれば、細胞の劣化はある程度抑えられても、肉体を永遠に保つことはできません。

  脳も肉体の一部ですから、衰えるのが当たり前です。そこで、脳が衰える前に、脳の中身、つまり記憶や自我を記憶措置に記憶させ、脳の回路と同じ回路を持ったコンピューターで再生させたら、肉体はなくとも魂は永久に存在できると考えている科学者もいます。

  もちろん現在の技術では、それは不可能です。脳の研究が進んだとはいえ、まだ脳の部分部分がどういう仕事をしているのかがわかる程度で、どのようにその仕事をしているかは皆目わかっていません。それに、構造が解析されたとしても、その構造どおりに働くように設計されるスーパーコンピューターは巨大のものになり、装置を過熱から守るためだけに、専用の発電所が必要になるほどだそうです。

  コンピューターの世界は日進月歩です。将来超小型の脳装置ができ、それをロボットに接続できる日が来ないとは言えません。ロボットが古くなれば新しいロボットに脳装置を接続替えします。万が一、事故があってもバックアップが取ってありますから、すぐ再生します。さらに技術sが進歩すれば、自分の細胞を増殖して、自分そっくりの人間を作り、その脳に保存しておいた自分の記憶や自我を入れられるようになるかも知れません。永遠の生命の実現です。

  しかし、彼は幸せでしょうか。もし一人だけが永遠の生命を得たなら、彼は生死におののく周りの人と共感できないでしょう。逆にすべての人が永遠の生命を得れば、新しい生命は生まれず、変化に乏しい世の中となります。自分の命は決して死なないと知った生命は日々をどう過ごすのでしょうか。

  死を恐れつつ、少しでも長く生きよう、少しでも楽しく生きようと努力するところに人生の醍醐味があるように思えます。衰えも悪くありません。

石川恒彦

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