表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > B&B(平成28年11月)
若いころの行き当たりばったりの旅行をしました。アメリカを横断しようとか、インドを一周しようとか、大体の目標を決めて出かけたものです。なるべく安い乗物を探し、なるべく安い宿探して旅をしました。安宿や、安料理店に行くと、同じように旅をしている人がたむろしています。彼らと旅の情報を交換して、次の目的地を決めます。彼らの教えてくれた乗物、宿、食堂は、ほとんど外れたことがありませんでした。アメリカでは、ヒッチハイクで巨大なトラックに乗せてもらったり、ネパールでは、郵便自動車に乗って、名も知らない奥地まで行きました。
子供ができてからは、もっぱら、かんぽの宿など、公共の宿を利用しました。当時公共の宿は人気で、一年前から予約しないといけませんでした。安い飛行機を見つけ、一家六人、ハワイで自炊したこともあります。まず最初の買い物は、電気釜でした。
住職になると家族旅行はなくなりました。お寺の集まりの旅行か、檀家と行く団体参拝が主な旅行でした。自由度は極端に低くなりました。それでも。普段は、口を利かない人と打ち解けたり、檀家の方から、思わぬ告白を受けたりして、有意義なものでした。
隠居して、旅行の虫が目を覚ましました。いろんなやり方で旅行しています。一番簡単なのは、旅行社の募集する旅行に参加することです。何も考えなくても添乗員が連れて行ってくれます。それだけ旅の印象が薄いように感じます。見ず知らずの人と一緒になりますから、気づまりの時もあります。それに、必ずと言っていいほど、土産物屋に連れていかれるのには閉口します。ただ、日帰りバス旅行は気に入っています。本当に手軽に安く一日の旅を楽しめます。いい気分で旅が終わります。軽くなった気持ちで夕食を食べて帰ろうと考えると大変なことになります。お酒を飲みますので、旅行代金より高くなってしまいます。
自分で全日程を計画することもあります。時間はかかりますが、ああでもないこうでもないと考えているは楽しいものです。手配は旅行社に頼んだり、ネットでやります。ただ、ネットの時代は、かえって情報が少ないような気がします。書店に行って案内書を探しても、昔のような詳しい本はなくなっているようです。困るのは値段です。正規の値段を払うほど太っ腹ではありませんので、各種の割引を利用します。これが複雑で、どの割引が本当に得なのかよくわかりません。外国の格安航空の格安席を予約した人に聞いた話では、椅子が壊れていたそうです。
先日北欧に行ったとき、B&Bを利用しました。これは、いわゆる民泊です。もともとは、民家が朝食付きで部屋を貸していましたが、今では部屋だけという場合も多いようです。私は朝食付きを好みますが、町によっては朝のカフェが楽しいところもありますので、一長一短です。料金は安いし、何より現地の人の生活がちょっとのぞけるところが魅力です。シャワーや便所は家族と一緒に使い、洗濯機なども貸してくれる場合があります。今回は日本でネット予約をして行ましたが、当日でも現地で予約ができるようです。
もう年ですが、ヨーロッパじゅう乗り放題のユーロパスを買い、予約のためのスマートフォンをもって、B&Bを泊まり歩きたいと、大それたことを考えています。
石川恒彦