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隠居からの手紙

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金貸し

   日曜の夕方は、酒を飲みながら「笑点」を見ます。その「大喜利」は、最近楽屋落ちが多くて、
ちょっと興ざめする時もありますが、まあ、他愛が無く、酒のお供にはなかなかです。

  いろいろ名物がありますが、林家木久扇(はやしや きくおう)の、「越後屋、お主もワルよのう。ぶはははは!!」
  もそのひとつです。答えに詰まったのか、あるいは答えに詰まったふりをしたのか、前後の脈絡なく、悪代官の口調で、思い入れたっぷりに、演じます。出演者はみんな憮然とした顔をしますが、観客には大受けです。

  時代劇を知っているものには、この場面はおなじみです。悪代官と組んだ悪徳商人が、商売敵、富農、あるいは代官の上司を、悪だくみで借金まみれにおとしいれ、最後の仕上げの相談をしているときに、思わず代官の口から、このセリフが漏れます。

  代官の承認を得た越後屋は餌食の家に乗り込みます。

  「若松屋さん。恨んでくれては困りますよ。私は何も、あんたに恨みがあるわけじゃない。ただ、商売の行きがかり上、こうなってしまったんだ。私も商売だから、あんたに貸したお金を返してもらわなければ立ちいかなくなる。 そこで、どうだろう。この店と家屋敷を私が頂いて、借金棒引きということでは。
そうそう、この一件は、あんたも知ってのとおり、代官様が一枚かんでいる。代官様は、お宅の娘お千代にぞっこんだ。お千代を代官様に差し上げて、万事手打ちということでは。」

  若松屋が逡巡すると、越後屋に付いてきた用心棒がすごみます。すると、物陰で一部始終を聞いていたお千代が現れ、代官の所へ行くことを承知します。涙、涙。

  最近、西武ホールディングスの経営陣と、アメリカの投資会社との対立が鮮明になってきました。
かって、西武がお金に困った時、お金をこの投資会社に都合してもらいました。西武の経営が立ち直って来た今、投資会社は、巨大な報酬を要求するようになりました。長期的な利益を考える経営陣に対して、一日も早く、それも巨額の利益を回収したい投資会社が対立しています。投資会社には、多くの投資家がお金を預けています。
彼らに一日でも早く一円でも多く利益を渡すのが、投資会社の仕事です。それによって会社の信用が成り立っているのです。

  強欲は美徳だと、アダム スミス先生が言っているそうです。他人より一銭でも多く稼ごうと、一所懸命に働く人々の力が、経済を発展させると考えたのでしょう。

  一般に、強欲投資会社は、投資先の企業の資産を売らせ、投資を抑えさせることにより、帳簿上の利益を出すようにします。そして、高額配当を得ます。最後に、帳簿上の利益と配当をもとに、高値で持ち株を企業に買い取らせ、おしまいとなります。企業は発展しません。

  日本やヨーロッパの一部には、投資会社の行動を規制するべきだという意見もあります。
しかし、多数意見は違います。なぜなら、投資会社は将来性のある企業、特に生まれたばかりの企業に投資して利益を得ようともします。アメリカで、今まで全く無名だった会社が、ロケットや電気自動車の製造業者として名乗りを上げています。野心的な投資会社のお金がものをいっています。

   日本もアメリカも、長いこと金融緩和を続けてきました。世の中にはお金が余っているはずです。
それがどうでしょう、失業者や低賃金労働者があふれています。政府が作ったお金は金融業者に留まっているばかりでなく、お金は真面目な企業をむしばむために使われています。

   時代劇ですと、最後の最後に、水戸黄門様や必殺仕掛人が現れて、悪は成敗されます。
しかし、金融の世界で善と悪を明快に区別する基準はありません。あふれるお金が大多数の利益のために使われる仕組みが出来る日を祈るばかりです。
それまで投資家は、 「アメリカ屋、お主もワルよのう。」 と、ほくそ笑んでいるのでしょう。

石川恒彦

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