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隠居からの手紙

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特定秘密保護法

   特定秘密保護法案を読んでみました。関連法規や関連組織の名が次々と出て、法律の専門家でない私には、ついていけない部分も沢山ありました。それでも、なんでこんな法律が必要なのかという疑問から逃れることは出来ませんでした。

  日本の官僚組織の守秘義務への意識は、高いものがあると思います。隠さなくていいものまで隠している場合もあります。その上、秘密保持について、既存の法律がよく働いているように見えます。それが証拠にここ何十年の間、重要とされた秘密が意図的に漏洩されたのは、西山太吉記者による日米密約暴露や、海上保安庁職員による、尖閣諸島に近付いた中国漁船の狼藉のビデオ配信ぐらいしかありません。しかも、今では、これらは秘密にしておく必要に疑問がもたれています。

  しかし、不注意による漏洩は沢山ありました。皆コンピューターに関係しています。ネットやメディアに対する無知から起こりました。警察官や自衛隊員が、素人目にも、秘密にしておいた方がよさそうだと思える情報を、世界中にばらまいてしまいました。これは法律では防げません。コンピューターを扱う全ての職員を教育する以外に方法はありません。また、公用コンピューターの私用禁止、公的文書の私用メディアへの複写禁止、ウィルス侵入阻止など、世界中の組織が未解決の問題に取り組むことこそ大切だと思います。

  無用な法律は弊害を生みます。一番心配されるのは、恣意的濫用です。組織や個人が自分たちに都合の悪い情報を、とりあえず、特定秘密に指定する危惧を否定できません。外国の武器業者から大臣以下幹部全員がピーナッツを貰った時、特定秘密指定が頭に浮かぶでしょう。

  この法律のいちばんの問題は、秘密指定した公務員の責任が問われないことです。指定は無用のものだと、裁判所あるいは第三者機関によって判定された時、指定した人は罰せられるべきです。指定者は各機関の長と定まっていますが、機関長がみずから指定を働き掛けることは少ないでしょう。実際に起案した人の責任を問うべきです。

  そんなことになれば、誰も指定を起案しないと役所はごねるかもしれません。
それでちょうどいいと思います。本当に必要なら恐れること無く指定できます。

  カミングアウトとよく聞きます。個人的秘密をもった人が、自らそれを公表することです。多くの場合、心がすっきりし、周りの人もそれを好意的に受け止めてくれると言います。国もカミングアウトしたほうがいいと思います。情報をもっと公開し、どんな案件も国民と一緒に考える習慣を付けたいものです。もちろん、カミングアウトした人も自分のクレジットカードの暗証番号を公開するようなことはありません。国にも保つべき秘密があることは確かです。それを守るにこの法律が必要とは思えないのです。

  それにしても、最近の中国の日本に対する挑発は度を超しているように思えます。秘密保護法の審議の最中に、防空識別圏を極端に拡大しました。法案に疑問をもつ国民も、反対に躊躇する事態です。あるいは、かってレーガンがソ連に軍拡競争を仕掛けて、ソ連の経済を疲弊させたひそみにならった深慮遠謀ではないかと疑ってしまいます。日本が過剰反応して、民主的価値を捨て、国民の福祉よりも、軍事を優先させるようなことになれば、日本の国力は低下すると踏んでいるのでしょうか。

  中国指導部にそれほどの知恵があるとは思えません。ただ、いやな雰囲気を感じます。
戦前の作家が感じた、漠然たる不安を、いま私も感じるのです。

石川恒彦

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