表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 艱難を(平成24年8月)
冷房の利いた部屋でオリンピックを見ています。電力事情を考えると、何か後ろめたい気がします。
ゆっくり見ているのが罪のように感じます。日本選手団の苦戦は、一層気を滅入らせます。
気がついたことがあります。歴史のある競技の選手は苦戦して、新興の競技は健闘しています。
「水泳ニッポン」はだめですし、「お家芸柔道」も期待できません。サッカーや、アーチェリーは、これからが楽しみです。
競技にも人気の盛衰があって、人気が出て、選手層が厚くなれば、それだけ人材も集まるということもあるでしょう。また、かって強かった競技は、成功神話にとらわれていて、練習や作戦に新機軸を出せないということもありそうです。
柔道などは、伝統の講道館柔道と、国際競技のJUDOとは、別のものになってしまっているように見かけます。柔道を習いJUDOを戦うのは無理です。いっそのこと、講道館は、JUDOから縁を切って、柔道に専心したほうがいいようにも思えます。JUDOを戦いたい人は、フランスにでも留学したらどうでしょう。
日本が全体として、スポーツに弱いのは、子供の時から、運動する機会に恵まれていないということもあるでしょう。受験受験という風潮もありますが、なんといっても子供が遊べる場所がないのが致命的に思えます。好きに遊べる広場、球を蹴りながら学校に行っても誰からも怒られない安全な道路、そういったものが必要ではないでしょうか。
冷静に考えれば、薄い運動人口の中、日本はよくやっているともいえます。
それは、人気競技の新陳代謝があるからでしょう。
そこで唐突ですが、日本経済に思いが向きます。日本の社会は、古い非能率な大企業が優先されていると思いませんか。起業起業と叫ばれている割には、新興企業が経済界の主流とはなっていません。
マイクロソフトやアップルのアメリカとは違います。
日本航空や東京電力が危なくなった時、政府はすぐに救済に乗り出しました。
大企業にとって代わろうとしている野心的な経営者の出番をふさぎました。
日本航空がつぶれても、航空需要は減りません。格安航空会社や、逆に高級飛行機の会社が生まれ、
世界に羽ばたいた可能性がありました。東京電力は政府の支援と財産の切り売りで、補償資金をねん出しようとしています。むしろ、原子力部門を除く全体を一括で売りに出したらどうだったでしょう。
原子力以外の東京電力は、魅力的な会社です。相当の資金を得ることができたでしょう。
原子力部門だけとなった東電は補償ができ、買収された本体は新しい資本と経営者で新たな活気を得たことでしょう。
日本の既成企業は間接直接に政府の支援がないとやっていけないとも言われています。
政府が支援をやめれば多くの企業がつぶれ、失業者が町にあふれるかもしれません。
しかしそれは一時的なものでしょう。必ず、新しい企業や産業が興り、日本は活気を取り戻すと信じる以外に日本の未来はないは無いと思います。
痛みを恐れている時ではありません。艱難こそ望むべきものです。
石川恒彦