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隠居からの手紙

表紙隠居からの手紙バックナンバーもくじ > 平成24年11月

万能細胞と倫理

  自分の細胞から万能細胞を作り、自分の体のどんな部分の細胞にも変化させることができる方法が見つかりました。
まだまだ研究の必要がありそうですが、現在不治の病といわれている、多くの病気が細胞の交換により治癒されるようになるでしょう。私が期待をかけているのは、歯になる細胞です。虫歯の下に歯になる細胞を注射すると、それが育って、虫歯を押し出し、その痕に健康な歯が生えるようになることです。

   万能細胞は生殖細胞にも変化します。どうしても子供の欲しい夫婦の夫が無精子症だと分かりました。
夫の皮膚細胞から精子を作り妻の子宮に挿入、めでたく子供を得ることができるようになるでしょう。
作今行われている子どものできない夫婦が他人の精子あるいは卵子で子供を作ることはなくなるかもしれません。

   しかし、ことはそこでは終わりません。結婚していても独身でも自分の遺伝子を持つ自分より優秀な子供を望む人もいます。そこに目を付けた口のうまい仲介業者が山中教授を訪ね、いかにお金が入るかを説明します。
研究費に困っていた教授は、ついつい承知して、自分の細胞を渡します。
業者は、それをもとに大量の精子と卵子を製作、山中印の生殖細胞を大々的に売り出します。頭脳明晰にして身体健全を保証された山中印は大好評です。

   山中教授は、あるいは考えるかもしれません。近ごろの若い者は、頭も体も軟弱だ。
これでは地球の将来が心配だ。ひとつワシのクローンを作ってやろう。教授は、自分の皮膚から大量の自分そっくりな子供を生みだします。

   山中印の業者は、困ったことに気がつきます。山中印を交配して生まれた子供はどうも不器用なのです。
これでは整形外科医は望めません。業者はDNAを分析して、遺伝子の一部を組み換えます。
改良山中印はますます人気が高まりました。

   生殖細胞や遺伝子の自由な流通は好ましいことではありません。人類の遺伝子が偏ってしまうからです。
誰もが理想の子供を求めて、生殖細胞を選んだり、遺伝子を組み替えたりすれば、何代かを経れば、皆似たような子供が生まれるようになるでしょう。それでは世の中は回りません。山中教授の偉大な業績は、教授と一緒に働いた、教授とは違う才能の人々の努力に大きく依っているのです。万能細胞は作れても、万能人間は作れません。

   また、人類は家族の愛情を軸に社会を作ってきました。無闇な遺伝子の交配は、その軸を狂わせる可能性があります。愛情と血統を切り離した社会、それは一種の乱交社会となるでしょうが、私たちは安定した社会を作れるでしょうか。

   私は次のような倫理規定が必要と思います。

1 自分の細胞由来の細胞を自分のために使うことは許される。
2 クローンは禁止する。
3 子供は親を知る権利があり、生物学的親はその子供に責任がある。
4 遺伝子の操作は行わない。ただし、厳選された遺伝病に限り法律で許す。
5 提供者の同意なく細胞を操作し、またその一部を身体に使用することを禁ずる。


石川恒彦

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