表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 保育参観日(平成24年10月)
保育園の見学に妻と行きました。私には子供が四人います。自慢ではありませんが、彼らの学校へ見学に行った記憶はありません。ただ一度、子供の学校の門をくぐったのは、娘の大学入学式の時で、多分、出席予定の妻の都合が急に悪くなり、どうしても行かなくてはいけなくなったのだったと思います。退屈でした。
今回は、息子の嫁に頼まれました。なんでも、敬老の日の前一週間は、祖父母見学の日に設定されていて、孫のヒロが、おじいちゃんおばあちゃんに会えると楽しみにしているというのです。一緒にお遊戯をしたり、食事をしたりしてくださればいいといいます。気が進みませんでしたが、義理の娘の頼みを断るのはかわいそうと、行くことにしました。
保育園は、下町の木造住宅密集地にありました。庭はおろか木も一本も生えていない感じの二階建ての園でした。着いたら入口のベルを鳴らすように言われていました。ベルを探しておろおろしていると、職員らしき人が扉をあけてくれました。
孫の教室は二階でした、私たちに気がついた孫がにっこり笑ってくれました。それだけでした。
彼はすぐに遊んでいた木製の線路と汽車のほうに戻りました。今日はほかの見学者はいないようでした。
椅子をすすめられたので、それに座り、ぼうっと教室の中を見ていました。子どもたちは思い思いに遊んでいて、うちのヒロも祖父母には関心ないように暴れていました。3人の保母さんは忙しそうでした。漏らした子のおむつを替え、便所に行きたい子の下着を脱がせ、帰ってくるとまた、はかせます。すぐ散らかる遊具を片づけ、遅れてきた子を受け入れ、早く帰る子を返します。
遊戯をすすめられないのにはホッとしましたが、時間のたつのが長いこと、もう昼かと思って時計を見ると、まだ30分しかたっていませんでした。
仕方がないので、そばにあった絵本を読んでいると女の子が近づいて来て、持っている本を読んでくれと言います。声を出して読んであげると、いつの間にか膝に上がっていました。1冊読み終わると、次の子が絵本をもって待っていました。この子も当然のように膝に上がってきました。
保母さんが「ヒロ君のおじいさん、本を読むのが上手!!」と、頼みもしないのに宣伝してくれましたので、列ができました。
プールの時間になりました。ベランダにビニールプールを出して、水遊びさせます。保母さんたちは、服を脱がせ、水着を着せ、終わると水着を脱がせ、服を着せます。よく服を間違えないものだと感心しました。
何人かの子供は、裸で自分の服を抱えてきて、私に着させました。ヒロは水遊びに加わりませんでした。プール大好きな子供ですが、どうも最近女の子に太ももを噛みつかれ、残った歯型を他人に見られるのが嫌で、裸にならないようでした。
お昼の時間になりました。ヒロは、おばあさんにおかずや飲み物の面倒を見てもらい満足そうでした。普段はしないという、ご飯の御代りをして、最後の一口がのどを通らなくなり、目を白黒させていました。今度は、別の孫の運動会に招待されています。
石川恒彦