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隠居からの手紙

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処罰感情

  処罰感情という言葉があります。犯罪が行われた時、その犯人に対して、個人や社会がもつ、どういう罰を与えたいかという感情です。とくに被害者や被害者の家族の処罰感情は重視されて、激しい処罰感情を示すと、法律の範囲内で、厳しい刑が科せられ、処罰感情が薄いと軽い刑になる傾向にあるといいます。
法制審議会から、法務大臣に対して、凶悪犯罪の時効を廃止したり、延長したりするよう、答申が出されました。社会の処罰感情の高まりを反映したものだと言われます。

  時効制度の当否は私にはよくわかりません。一般に時効制度が設けられたのは、時間と共に証拠が散逸して、正しい判決に到達するのが難しくなる。記憶が薄れるとともに、被害者や社会の処罰感情が薄れる。逃げている間に罪を購い、まじめな生活を過ごそうとしている人を改めて罪に問う必要はない。などの理由によるとされます。

  しかし、容疑者が国外にいる間は時効が中断します。犯人が海外にいるといって、上の三つの理由が無くなっているわけではありません。どうも時効制度というのは、極めて事務的なもので、古くなった事件はもう追わない。未解決事件を沢山抱え込んでは、新たな事件に対応するのが大変だ。古い事件のために、新しい事件の捜査に支障が出ればかえって社会正義に反する。といった、現実的理解の上にできているのではないでしょうか。

ところが、国民の間に厳罰主義の感情が高まっています。また、悪い奴は絶対に許さないという風潮も顕著になってきました。それに押されて、時効の期間も長くしようということになったのだと思えます。

  罰主義には、社会の落後者を徹底的にやっつけようという気持ちが含まれているように思えます。ホームレスを襲撃したり、少数派の意見をブログで発見すると、一斉に攻撃するよう厳な気持ちです。私たちは、自分と異なるものを排除しがちです。異質なものの住める環境、寛容な社会こそが犯罪をなくす社会です。もっと寛容な社会を作ることではないでしょうか、誰もが、自分も社会の一員だと思える社会です。

  テロとの戦いと言いますが、テロリストを殺しても新たなテロリストが生まれます。それはテロリストを生む温床は、社会的不正の存在だからです。テロリスト達は自分の集団はこの世の中で受け入れられていない、将来に希望が持てないと、感じています。

  被害者の処罰感情は大切です。憎むべき犯罪の被害を受けた人に、犯人を許せとはなかなかいえません。
子供を残忍な手口で殺された親が、犯人の死刑が確定すると、『これで子供に顔向けが出来る』といって、涙を流します。しかしこれは、復讐心の満足です。彼が本当に求めるものを得たとは思えません。

  処罰は第三者に任せ、自らは復讐心を捨て、相手を許す境地なったとき、はじめて心の安寧を得ます。
ところが、まわりがそれを許しません。野次馬達は、被害者が怒り泣き、重罰を求めることを期待します。
被害者はのっぴきならない立場に立たされます。私たちは心しなければなりません。復讐心をあおるなと。

平成22年3月
石川恒彦

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