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隠居からの手紙

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貧民党

  近頃、一億総中流といわれた時代を懐かしく思い出します。1970代から80年代にかけてだったでしょうか。国民の意識調査をすると、大部分の人が、自分は上でもない下でもない、中の生活をしていると答えた時代です。
評論家は、日本社会を「一億総中流」と言って揶揄しました。みんなが同じような着物を着、同じような食べ物を食べ、同じような望みを持って、特別の金持ちもいなければ、特別の貧乏人もいない社会、際だった人物の出ないつまらない社会だと批判しました。しかし、日本が一番景気の好かったとき、みんなが元気だったのはその時代だったのではないでしょうか。

  日本はバブル時代を経て、格差のある国になりました。格差は所得だけではありません。機会の格差が生まれたといわれます。所得の格差により、教育を受ける機会や、職に就く機会が固定化されてきました。一部の人には、仕事も地位も収入も心配のない生涯が期待されます。それ以外の人はいつ社会の中心からはじき出されるかと戦々恐々としています。貧乏人の子供は、どう努力しても、はい上がれないという絶望感を持つようになりました。
  青いテントにすむ人が増えるということは、市場から商品を買う人が減るということです。青いテントに住まずとも、今日を生きるのにぎりぎりという生活をしている人が増えました。賃金を下げて価格競争力を高め、外需に頼ったことが、内需を弱めました。今回の金融危機で日本が甚大な被害を受けた原因です。賃金を下げるということは、市場という生き物が自分の身を食べているようなものです。一億総中流の時代は内需の時代でした。
少し景気に回復の兆しが出てきたといいます。巨大な平成21年度予算と補正予算による景気刺激策が功を奏していると言います。しかし、この策には長期的視点が欠けているように思えます。何が何でも需要を喚起しようというので、膨大な借金で作ったお金をばらまいています。市場からはじき出された人々を再びどうして市場に戻すのかということは少しも考えていません。いってみれば、バブルの後始末にバブルを作っているようなものです。社会の弱者が市場に戻れないとき、この借金を誰が返すのでしょうか。

  市場の周辺にいる人を市場に戻し、あるいは市場からはじき出されようとしている人々を市場にとどめる努力が必要です。大きい市場はいい市場です。一握りのお金持ちが消費を増やすより、沢山の庶民が市場に参加する方が消費を盛り上げます。経営者もその方が結局は得です。
  まず、勤労者が安定した充分な給与を得られる制度が必要です。職を失えば生活補償と職業訓練を得られる制度も必要です。

  総選挙が近づいてきました。現在の二大政党には、たとえ弱者への同情はあったとしても、弱者をどう社会の本通りに戻すかという政策に欠けているように見えます。今こそ市場から落ちこぼれようとしている人々が、声を上げるときです。貧民党を組織して、一億総中流の復活を訴え、世襲議員の選挙区に候補者を打ち立てるなど、夢でしょうか。

平成21月6月
石川恒彦

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