表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 定額給付金と寄付(平成21年4月)
定額給付金について、昨年の11月から12月にかけて、三つの新聞に、2週間ほどずつ間を開けて、投稿しました。残念なことにどこでも採用されませんでした。
投稿の趣旨は、せっかく思わぬ収入があったのだから、それを有効に使おう。特に生活に余裕のある人は、余裕のない人のために使おう。どう使っていいかわからなければ、困っている人のために働いている団体に寄付したらどうかという提案でした。
自分ではいい考えだと思っていることが、誰にも関心を持たれないのは、つらいものです。ところが、今年に入って、海外援助に活躍している仏教系の団体から、定額給付金を回してくれという、要請の手紙がきました。続いて、新聞紙上に、定額給付金を寄付するときに、窓口となる団体ができたという記事が載りました。私の考えが、まったく的を外れているわけではなかったと、ちょっと、勇気づけられました。
そもそも定額給付金は、お金を有権者にばらまきたいという政党の思惑と、消費を刺激しなければならないという経済の必要が、不純に結びついて、実施に移されました。経済学者は、効果は限定的だというし、国民の評判もいまいちです。逼迫した財政事情の中、急速に悪化する経済のために、貴重なお金を使うというのに、どう使ったらよいのか政府に考えがないとは、まさに政治の貧困です。
政府に考えがないなら、国民が考えて、それを行動で示せないでしょうか。定額給付金はそのいい手段になりうると思います。この世間には、お金を必要としているのに、お金が回ってこない個人や団体が沢山あります。たいていそういうところは、政治的影響力が弱く、政府のお金も回ってきません。お金のある人のほうが、かえって政府のお金を手に入れる機会が大きいように見えます。
そこで定額給付金です。見方を変えれば、政府にはどこにお金を使っていいのかいい知恵がないので、定額給付金を差し上げるから、それを皆さんでうまく使ってくださいと言われているようなものです。この機会を逃す手はありません。余裕のある多くの国民が、お金が回るべきだと考えるところに寄付をするなら、それが大きな波となって、いま国民がどこにお金を使ってもらいたいか、政治に示すことができます。そのうえ、景気の回復にも役立つでしょう。なぜなら、必要なところへ行ったお金は、必ず消費に回るからです。
適当な寄付先が見つからない方は、先にあげた窓口が使えます。NPO法人チャリティ・プラットフォーム内 定額給付金基金事務局が寄付を割り振ってくれます。
(NPO法人チャリティ・プラットフォーム:http://www.charity-platform.com/kikin/)
ただ、この事務局は、寄付の中から、10%を手数料として取ります。欧米ではこれは当たり前の手法だそうですが、日本のお寺で寄付を集めた経験から言うと、日本の寄付者は、寄付金が、本来の目的以外に使われることを好みません。また新興の法人ですので、信用に問題があるかもしれません。そういう方は、同じ法人が運営する、チャリナビ NPO・NGOデータから、各団体のホームページに入って、団体の活動を確かめ、直接寄付を送ることができます。
(チャリナビ:http://www2.charity-platform.com/navi_search.php)
日本には寄付の文化がないという人がいます。そんなことはないと思います。学校やお寺が寄付を集めると、大金が集まります。日本で希薄なのは、直接関係のない団体に小切手やネットで寄付金を送る習慣だと思います。この機会に試してみようという人が沢山出てきたらと、期待しています。
石川恒彦