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隠居からの手紙

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新しい日本人

横田滋さん、山口美智子さん、関根秀一郎さん。彼らの活躍を見ていると、新しい日本人が生まれつつあると感じられます。

横田滋さんは、御存知、北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんのお父さんです。
山口美智子さんは、薬害C型肝炎訴訟の代表です。自分の肝炎が薬害によるものだとわかったとき、実名で名乗り出、原告団を組織して、訴訟に踏み切りました。

関根秀一郎さんは、お二人に比べると、あまり有名ではありません。スポット派遣といわれる、劣悪で不確実な条件で働く労働者を労働組合に組織しました。
三人を見て、新しい日本人だというとき、その特徴を一言でいう適当な言葉がありません。彼らは、声高に叫んだり、泣きわめいたり、暴力寸前の態度をとったりしません。彼らは、自らの主張を、あくまでも、静かに粘り強く訴えます。彼らは明らかに指導者です。しかし、指導者らしくは振舞いません。常に仲間のうちの一人です。そして、強い信念があります。自分のやっていることが何なのかよく心得ています。いちばん驚くのは原則がぶれないことです。

政府の責任を限定した和解案が出た時、山口さんがテレビカメラの前で、「一律全員救済が私たちの願いです。今回救済対象となった私たちの救済金が減ってもいいですから、汚染時期を問わずに、すべての血液製剤によるC型肝炎患者を救済してください」と、訴えた時、私は強い感銘を受けました。感銘を受けたのは私だけではなかったようです。この発言が全員救済に至る潮目になりました。

大切なことは、こういう人々の主張に耳を傾け、受け入れる用意が日本の社会に育っていることです。足利鉱害や水俣病の時は、もっと別な指導者が必要でした。

明治維新や、戦後復興、あるいは高度成長のときには、がむしゃらに働く人々が重用されました。今日では、そういう人々はだんだん少なくなっています。それを見て、日本の社会が活力を失ってきているという人もいます。
  そうでは無いと思います。日本は今、子供の時代から大人の時代に移ろうとしているのだと思います。やみくもに、自分の欲望を満たそうというのではなく、より高い価値を追求するようになったのです。それは激しいものではなく、温和で利他的です。 

この傾向によって、あるいは、日本は世界一の経済大国にはなれないかもしれません。しかし、調和の取れた日本社会は、他国の人々が、是非住みたい国と、うらやむ国になっていくような気がします。
そのさきがけが横田さんたちです。

平成20月2月
石川恒彦

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