表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 行きそこなった旅(令和3年12月)
ずいぶんと旅をしました。若いころは一人で。結婚してからは連れ合いと。ところが、コロナウイルスです。ここ二年はどこにも行っていません。その間に、彼女は歩行困難になってきましたので、流行が収まっても、もう旅行には行けないと思います。もし彼女が病気にならなかったら行きたかった夢の旅はたくさんあります。
東海道53次:東京の日本橋から京都の三条大橋まで、途中53の宿場に泊まる旅です。宿場と宿場の間は、だいたい5キロから10キロですので、昔の旅人は、一日歩けるだけ歩いて、途中の宿場は飛ばしましたので、全部泊ったわけではありません。私たちは、ゆっくり歩いて、全部の宿場で泊まろうという計画です。昔の宿場の姿は変わって、宿のないところもありそうですので、そういうところは近くの宿を探します。旅行案内は、広重の東海道53次の絵と、弥次さん・喜多さんで有名な十返舎一九の東海道中膝栗毛の本だけという、ちょっとした冒険です。
日本の有人島探検:日本には、本州、四国、北海道、九州、沖縄を除いて6,852の島があるそうです。そのうち人が住んでいるのは421です。数えてみると10ぐらいの島に行っています。大きな島では、小笠原島や対馬島に行っています。死ぬまでに50ぐらいになったらいいなと考えていました。
ナイル川舟航:エジプトの古代文明を育てたナイル川を船で旅しようという計画です。実は、10年ほど前に行くことにして、お金を払ったのですが、暴動が起きて行きそこないました。ヨーロッパとアジアの境目、トルコにも行きたかったのですが、機会がありませんでした。
北海から黒海へ:1992年にライン・マイン・ドナウ運河ができて、ライン川とドナウ川がつながり、オランダからルーマニアまで船で行けるようになりました。まずはアムステルダムからブタペストまで、そこで船を乗り換えブカレストまで行けるようです。ライン川はオランダで三角州をつくっていくつかの支流となり、ドナウ川も黒海に入ると三角州で三つの支流になるようで、直接、北海と黒海に入れるわけではありません。それでも、ウイーン、ベルグラード、ブカレストなどの歴史ある街を見物でき、途中の景色も素晴らしいということです。これは、コロナ直前に計画を進めていたのですが、駄目になりました。ベートーベン生誕250年の年で、ウイーンでは何か面白いことがありそうだと、それも期待していました。
グレートジンバブエ遺跡:アフリカ南部の内陸国ジンバブエにある、世界遺産に登録されている城跡で、近世に白人に発見されたとき、黒人にこんなものは作れない、アラブ人の影響のもとにつくられたと主張された石造建築物群です。近年になって、アフリカ人が作ったことが証明されています。ついでにザンビアとの国境にあるヴィクトリア滝も見物できるのが余得です。
行きたいところは、まだたくさんありますが、これからは、東京の街、特に生まれて育った。池上とその周りを散歩しようと思っています。
石川恒彦