表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 敬老の日(令和3年10月)
敬老の日の数日前に、孫の保育園から、はがきが届きました。孫の描いた小さなリンゴとオレンジの絵とともに、保育士が細かい字で書いた、孫の様子の報告がありました。
最近120ピースのパズルを完成させるなど、素晴らしい集中力があり、園の生活を楽しんでいるとありました。早速、母親にはがきをもらったことをLINEで知らせました。彼女の返信よれば、孫の集中力ではなく、保育士の忍耐力が優れているのだそうです。なるほどと納得しました。
上の孫の時には、敬老の日の前後に園を見学することができました。日時を予約して、妻と一緒に出掛けました。古い民家を利用してかなり前に開園したようで、どことなくみすぼらしい感じでした。教室に入ると、自由時間で、みんな騒いでいました。私の孫は、照れているのか、私たちのそばに寄ってきません。保育士が、本を読んでやってくれますかと尋ねますので、二つ返事で引き受けました。
一人の子が、絵本をもってやってきて、当然のように私の膝の上に乗りました。声を出して読み始めると、それに気が付いた子たちが、それぞれ絵本を持って並び始めました。みんなに読んであげている間に、ビニールプ-ルの用意ができて、水浴びの時間になりました。小さなプールですので、交代で入ります。終わると、さっき本を読んであげた子たちが、タオルと下着をもって、わたくしたちのところに来たのにはびっくりしました。近頃は核家族で、ジジババという人種が珍しいのかなと思ったものでした。
それから給食を一緒に食べて、楽しい午前中でした。
今年はコロナウイルスのせいで中止になり、代わりにはがきとなりました。おそらく職員総出で、はがきの準備をしてくれたのでしょう。ここ一年以上、孫の顔を見ることができませんでした。園の皆さんに心から感謝の気持ちを持ちました。
ところが、私たちは、この行事のもう一つの面を見ることがありませんでした。母親からの返事には、はがきを出した日の夕方、園に迎えに行くと、まず、今日はがきを出したことを興奮して話したといいます。はがきの準備ができた後、園児たちは並んでポストに行き、順番に投かんしたのです。初めての投函ですね。
さらに、私からハガキが着いたと連絡があったと孫に話すと、孫はニコニコ喜んだといいます。これではいけないと、孫に平仮名でありがとうのはがきを出しました。
私は保育園の人たちが、老人のために努力してくれたことを感謝しましたが、保育園本来の教育の一環として、孫たちに敬老の日のはがきを作らせ、投函させたことに気が付きませんでした。それが大成功だったのは、孫の興奮の知らせからわかりました。あらためて園の皆さんに感謝の気持ちが湧きました。
孫には、敬老の意味は解らないと思います。しかし、ジジババが特別の存在であることには気づいていると思います。今回のような小さな経験の積み重ねが、家族の絆が弱くなってきているという現代にあって、祖父母と孫の間だけではなく、家族の間の心の交流に温かいものを生み出していくのではないでしょうか。
石川恒彦