表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 基本所得(ベーシックインカム)(令和2年7月)
6月の初めに、国がくれる特別定額給付金の申請を郵送しました。月末になりましたが、まだ入金がありません。
娘がサンドウィッチを持ってきてくれました。給付金の話になりました。
娘:それでそのお金、何に使うつもり?
私:接待を伴う飲食店に行きたいな。
娘:それじゃ私はお母さんをホストクラブに連れて行ってあげる。
娘はこれをlineグループに流しました。気がついた妻はカンカンです。
妻:なんてことを考えているの。こないだ、子ども食堂に寄付するといっていたのはうそだったの?
私:子ども食堂は本当だよ。これは冗談だよ。
妻:悪い冗談はよしてください。あなたたちの冗談は他人には通じません。
コロナウイルスのせいで、家に引きこもっている老夫婦には、お金の使い道がありません。
観劇、旅行、外食、全部だめです。そこで、次の世代を担う少年少女に、たっぷりご飯を食べてもらおうと考えたのです。
この給付金は、全国民一律に10万円支給されます。大富豪の孫正義さんにも、まあまあの隠居生活をしている私にも、今日のご飯にも困っている失業者にも10万円です。不公平ではないかという声があります。もっとも孫さんは、最近大損をしたということですから、10万円もらって涙を流しているかもしれません。冗談、冗談ですよ。念のため。
一律支給は理解できます。支給事務の単純化です。もし、収入に応じて支給額が変化するようにしたら、収入を証明するための事務量が膨大になります。それに、去年は収入の良かった旅館の支配人が、今年は失業している場合、逆に去年は収入が少なかったが、今年はマスクを打って大儲けした人を、どう区別するのでしょう。
一律支給でも、申請から.一月たっても入金がありません。収入別にしたら、一年たってもお金が届かないでしょう。
間違ったのは、非課税にしたことでしょう。本来の収入と合算して、累進課税すれば、不公平感はかなり和らげられたのではないでしょうか。高収入の人は45%、低収入の人は無税となります。
定額給付金は基本所得 (ベーシックインカム) を連想させます。実際、今回の支給に際して、導入を提案した人もいたようです。基本所得とは、政府が国民の最低限の文化的生活を保証するために、一定額のお金を、すべての国民に支給する制度です。
問題は財源です。一人一月10万円を保証するとなれば、150兆円を越すお金が必要です。今年度の政府当初予算は100兆円を少し越した額です。基本所得推進論者は、いろいろ数字をいじってそれが可能といっていますが、今一つ納得できません。
しかし、日本の所得格差を和らげるためには、大変いい制度に思えます。研究に値する課題だと考えています。
石川恒彦