表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > ユニセックストイレット(令和元年12月)
旅をすると思いがけない発見があります。
先日、ハワイに行って見つけたのがユニセックストイレットです。きれいな海岸を散歩した後、ホテルのカフェで食事をすることにしました。ピザを注文してから、手を洗いたいと思い、厨房の裏にある便所に行きました。入って戸惑いました。入ってすぐが、女子用、次が、ユニセックスという表示の扉です。きょろきょろ見回すとその奥の曲がったところに男子用がありました。
調べてみると、ユニセックストイレとは、性別にとらわれず、誰でも使える便所で、家庭の手洗いや、飛行機の手洗いは、ユニセックスです。
公衆便所になぜユニセックストイレット必要かというと、小さい娘を連れたお父さん、小さい男の子を連れたお母さん、体の弱った異性の親を連れた人、異性の介護をしている人などが、利用しやすいところにあります。もちろんLGBTなどの性的少数者も利用しやすいでしょう。
Aさんという老僧がいました。このかたの奥さんは病気をしたらしく、介護なしでは何もできませんでした。Aさんは忙しい方でしたが、奥さんを家に置いておくわけにはいかず、どこに行くのも連れて歩いているようでした。唯一の気晴らしは、温泉で、温泉にも奥さんと一緒でした。旅館について一休みすると、奥さんを大浴場に連れて行きました。もちろん女風呂です。着物を脱がせ、浴場に一緒に行き、体を洗って、風呂につからせてやりました。風呂から上がって、部屋で奥さんを休ませると、こんどは自分が男風呂に行き、ゆっくり温泉を楽しんでいたようです。
ある時、男が女風呂に入って,咎められることはないのですかと聞くと、そんなことは一度もないということでした。時に手伝ってくれる婦人もいたようですが、「僕のようにうまくはできないよ」と、笑っておられました。
風呂や便所を男女別にしようというのは、宗教や習慣に根差しているのかもしれません。西洋の男性が、北欧のサウナや日本の大浴場に入るには、一大決心がいるそうです。ところが一度はいると、その快適さに病みつきになる人が多いと聞いたことがあります。
男女差別をなくそうという風潮や、空間の有効利用の観点から、ユニセックストイレットはこれから増えそうです。男女別の区画は無くなっていく傾向かも知れません。
心配されるのは、性犯罪です。現在、便所は目立たないところにあって、扉を開けると、中にいくつかの個室があります。この形式を男女別のない手洗いに踏襲すれば、犯罪者にとって格好の場になってしまいます。また、男子が、立ったまま小用をすると便器が汚れます。これを嫌う女性も多そうです。
新幹線が参考になりそうです。通路に沿って共用の個室があり、内鍵がかけられます。男の小用と、化粧室は別にあります。
音も臭いも漏れない個室が用意できれば、男女別の空間は必要なくなるかもしれんせん。その時は、ユニセックストイレットは、死語になりそうです。
石川恒彦