表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 医療事故(平成18年6月)
医療事故はあってはならないといわれます。また医療事故は避けられないともいわれます。
わたしはいま父の療養を妻と手伝っています。病院に通い充分な訓練を受けてきました。二人ともどちらかと言えば慎重な性格です。それでも間違いを起こします。
告白Ⅰ 血糖値を計る針を刺すとき、皮膚の消毒を忘れました。
告白Ⅱ 使い終わった針を新しい針の山に放り込んでしまいました。(古い針があるとおぼしき付近の針を全部捨てました。それでも一週間ほどは気になってしょうがありませんでした。)
告白Ⅲ インシュリンを打ち終わったとき、自分の皮膚に針を刺してしまいました。(まさかおやじはエイズではないと祈りました。)
告白Ⅳ 腹膜透析のとき、開始操作と終了操作を間違えました。
告白Ⅴ 腹膜透析のとき、机を動かそうとして、腹から出ているカテーテルをひっぱってしまいました。
告白Ⅵ 腹膜透析のあと、排液袋を完全に閉めずに、床をぬらしました。
告白Ⅶ 車椅子を押して廊下を曲がるとき、柱に父の足をぶつけました。
重大な医療事故にあった人々にとって、医療事故は避けられないと聞くことはつらいことでしょう。しかし私たち夫婦は、十分注意をはらっているつもりでも、失敗はあるものだ、医者が失敗しても、あまり強くいえなくなったなと、経験を積んでいます。
石川恒彦