表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 人物(平成18年4月)
世の中には人の力ではどうにもならないこともあれば、人の力があればこそということもあります。
横田めぐみさんのご両親がいなかったら、北朝鮮による拉致問題はこんなに世の同情を集めなかったように思えます。内面の怒りと悲しみをじっと押さえて、大上段に振りかぶらずに、訥々と思いを訴える滋さんと、毅然と語る早紀江さん、そして、時に見せるかすかな意見の違い、この絶妙な組み合わせが拉致問題は国民にとって座視できない重要な課題であることを世間に知らしめたのです。
チベット仏教の指導者ダライラマ14世も、その人格がチベットへの人々の同情を呼ぶ大きな力となっています。
観音様の生まれ変わりだという24歳の青臭い坊主をチベットから追い出したとき、中国の指導者達はその青年ダライラマが、成長して、今日の世界中から尊敬される宗教指導者となるとは、想像もしなかったでしょう。
ダライラマはダライラマだから尊敬されているという面もたしかにあります。しかし、それより何より、ダライラマ14世個人が困難のなかで培った学識と人格が人々の尊敬を招き、中国のチベット統治に問題のあることを人々に知らしめているのです。
それにしても、拉致問題も、チベット問題も、早く平和裏に解決してもらいたいものです。
それには皆の協力が不可欠です。人の力ではどうにもならないことにしてはいけないと思います。
石川恒彦