表紙 > 住職より > バックナンバーもくじ > 平成29年1月
冬至の星祭りが終わると、新年をお迎えする準備で忙しくなります。「明日出来る事は今日やらない」事が非常に多い私ですが、年始は待ってくれません。さらに、昔から耳元で「一夜飾りはダメよ一夜飾りはダメよ」と呪文のように繰り返した母のお蔭で、三十日には正月の準備が終わります。
池上山内の僧侶は、大晦日の午後に本門寺様に集まり、歳末の法要に参列させて頂く慣習があります。法要後に貫首様からお言葉を頂戴した後、用意して頂いた年越し蕎麦を持って、それぞれが下山します。
幼少時、父が持って帰って来てくれるその蕎麦が食べたくて仕方なく、弟と醜い争いを繰り広げた記憶があります。母の用意してくれた我が家の年越し蕎麦よりも美味しいと感じていました。同じ蕎麦屋のお持ち帰り用の出前なのに、不思議なものです。
下山後、女性陣は正月の食事の支度などで忙しくしています。ウロウロとしていても邪魔なだけなので、事務所に籠ります。台所の喧騒から一人離れて、哲学的な顔をして一年を振り返り、来たるべき新年を思います。
「正月は妙の一字のまつりなり」 (秋元殿御返事)
「妙とは蘇生の義なり。蘇生と申すはよみがへる義なり」 (法華題目鈔)
小僧をさせて頂いた誕生寺の石川貫首様が、新年を迎える私を励まして下さったお言葉です。 それぞれの立場でお役目を全うしなさいと添えて下さいました。
正月は、仏様から新たなる命を頂戴して、新しい自分としてお役目を果たしていくはじめの一歩の日なのだ、と受け止めさせて頂いています。
平成二十九年が安穏な一年になりますよう、心より祈念申し上げます。
石川龍彦